座敷わらし(2013年12月お題SS)

BL♂UNION

匂い系大学生もの。
浅海ゆいさん幹事のお題SS(2013年12月)。
お題は「留守番」「言い訳」「ラーメン」。
約2300字。




「留守番ありがとう」
 おれのおかしな独り言。ちょっと遠くのクローゼットに目をやりながら、ポットにやかんで水を満タンまで注いで、さっとコンセントに繋ぐ。テーブルに置かれたノートパソコンを開いた。
 すぐそこのコンビニから戻って来ただけだ。大晦日は、いつもバイトをしているファーストフード店も休業なんだ。年越しの瞬間だって、本当はバイトに没頭していたかったのに。
 単位の取り具合も順調で、何の課題もない大学二年生のおれが、いつものアパートで新年を迎える。母さんがプレゼントしてくれた、この広すぎる2DKで。
 自分で決めたことだけど、やっぱり寂しい。だけど実家に帰れば、もっと傷ついてしまうから。
 言い訳は、「友達の家で年越しパーティーをする」だった。アメリカじゃあるまいし、地味なおれがそんなのに参加するわけないのに。
 テレビのチャンネルを紅白に変えた。大好きだったはずのお笑い番組に、おれは勝手に一人で傷ついている。
 最近やたらとテレビに出るようになった、大量のおネエ系タレントたち。彼ら、もとい彼女たちに罪はないけど、今はチャンネルを変えさせてほしい。
 テーブルの上に、カップラーメンを二つ置いた。両方にお湯を注ぐ。
 今日は一年のしめくくりの日だから、勇気を出して話しかけたいんだ。
 食事の前に洗面所で手を洗う。鏡に映るのは、高校生によく間違われる童顔で低身長のおれだ。こんなだから、二丁目に行く勇気も出せない。
 あと数分で二つのカップラーメンが出来上がる。その前におれはブラウザを立ち上げて、ログインしっ放しのQ&Aサイト「OK袋」を開いた。これから話しかける勇気をもう一度もらうために。

☆解決済みの質問☆
kazukiXXXXXXXXXX
大学生の男です。
ずっと、悩んでいます。
おれはどうやら、ゲイみたいです。
中学校の時の初恋の相手も、高校時代に好きでたまらなかったクラスメートも、男子でした。
治そうと思って努力したけど、大学生になってもおれは自分を変えることができませんでした。
もう長い間、実家に帰っていません。
理由は、唯一の家族の母が、ゲイを非難する言葉を聞くのがつらいからです。
最近はテレビにおネエ系タレントばかり出ていて、それを見る度に母は「オカマとかホモとか気持ち悪い!」と慌ててチャンネルを変えます。
おれは平静を保っていられる自信がありません。
だけど、大好きな母とずっと離れたままなのも苦しいです。
おれはどうしたらいいんでしょうか?
勘当覚悟で、カミングアウトするべきでしょうか?

☆ベストアンサー☆
makotoXXXXXXXXXX
カズキくんへ、僕は20代のゲイです。
ずっとつらかったね。
誰にも相談できずに、一人で悩んできたんだろうね。
だけどお母さんは、なかなか実家に帰って来ないカズキくんのことをとても心配していると思うよ。
会って顔を見せて、喜ばせてあげてね。
カミングアウトのことだけど、僕は自分がゲイであることが親にバレて、勘当されてしまったんだ。
実家から大学に通っていたのに、いきなり放り出されちゃったから、住む場所がなくて困ってるよ。
ま、そのことは置いといて(笑)、カミングアウトは今すぐしなくてもいいと思う。
それよりも、まずは家族のことを大切にしなきゃ。

 何度、似たような質問を投稿したことだろう。
 大学から帰って来て、もやもやしたまま今日もやっぱり投稿しようかなって思ったら、いつもログインしっ放しのIDが違うやつになっていた。
 誰だろう、「makoto」って。そう思った瞬間、それまでの疑問が全て繋がったような気がしたんだ。
 身体の小さいおれは、食べたいという欲求は人一倍あるのに、胃がそれに追いついていない。コンビニ弁当も、カップ麺も、いつも微妙に残すのが常だった。
 それが、捨てようとする時にはいつも空っぽになっていることに気付いた。
 その瞬間は怖くてたまらなかったけど、「OK袋」の回答を見てからは、ちょっとだけ気が軽くなった。
 おれにちょっとだけ似たとっても優しい「座敷わらし」が、このアパートに潜んでいるかも知れないって思うと、なんだか楽しい気分になれるんだ。
「ラーメン、できたよ」
 いつもの独り言よりも大きな声で、テレビの横のクローゼットに向かって話しかけた。一緒に年越しラーメンを食べよう。おれはそばアレルギーだから。
 微かに、音が聞こえた。そんな気がする。
「出て来てよ」
 おれはできるだけ明るい声で呼びかけた。
「ずっと知っていたよ。おれと一緒にラーメンを食べようよ、座敷わらしのマコトさん」
 ごとっ、と音がして、木目のクローゼットが少しだけ開いた。映画だったら、住人がきゃあって悲鳴を上げるシーンだ。
「マコトさん」
 おれはゆっくりと歩みを進める。「OK袋」の文面は仮の姿で、本当は相当ヤバい人なのかも知れない。
 いや、十中八九そうだろう。だって、この人は不法侵入をしているわけだからな。
 でも、もう何でもいいんだ。独りぼっちの年越しは、寂しすぎるから。
 目をぎゅっとつぶりながら、勢いよくクローゼットを開けた。
「――知っていたのか……?」
 低く、透き通った声が耳元で聞こえた。
「初めまして」
 おれは目をつぶったまま、右手を中に向かって伸ばす。
「通報する……?」
 ちょっぴり緊張した優しげな声に、おれはゆっくりと目を見開く。
 おれよりずっと背の高い、端整な顔立ちの美青年がそこにいた。
「マコトさんは行く場所がないんだよね?」
 親に勘当されてしまったから。
 今まで勝手にあれこれと想像していた、座敷わらしの実物版に見とれながら、なぜかおれの心臓は激しく高鳴っていた。
「ああ……」
 おれの両肩に温かい手が置かれる。
「ここにいてよ」
 大学生なんだよね?
 おれはこの優しそうな不法侵入者の、次の言葉を根気よく待っていた。何かが始まるような、終わるような、そんな予感がした。

(了)




こんにちは、作者の牛若です。
浅海ゆいさんが幹事を務めるお題SS、今回のテーマは「留守番」「言い訳」「ラーメン」でした。
規定での目安は4000字以内なのですが、今回は約2300字とコンパクトです。
あらすじにあえて「匂い系」と書いておきました。
よく考えるとBLじゃないよね、これ(笑)。
実は牛若の小説のメインキャラに、「ゲイ」の方が登場するのは初めてだったりします。
中編とか長編のアイディアにどうかな、なんて思いながら実験的に書いてみました。
2013年ラストのSSとして、ものすごい妙なものになりましたが(笑)。
ではでは、またどこかでお会いしましょう。
2014年もよろしくです!

牛野若丸

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