どぶろく(2014年4月お題SS)★お色気注意★

BL♂UNION

大学生もの。
沙色みおさん幹事のお題SS(2014年4月)。
お題は「酒」「宝石」「盗む」。
約4000字。




 大学の講義が終わったオレはいつものように、山都のアパートに遊びに来ている。
 一緒にゲームをしたり、映画を見たり、お菓子を食べたり。そんな他愛ない時間が、自分にとっては至福の時だ。
 だって、オレは――
「なあ山都って、どんな酒にも強いのか?」
 二人がかりで中ボスを倒し終えると、オレはコントローラを床に置いて問いかける。
「いきなり何を言い出すんだ、七海?」
 テーブルの前に立った長身の山都は、オレのグラスにオレンジジュースをついでくれている最中だった。アーモンド型の目に優しく見つめられると、どうしても胸が高鳴らずにはいられない。
「山都って、すっごく酒に強いだろ」
「七海が弱すぎるんだよ」
「どうせオレは下戸だよっ」
 山都からオレンジジュースを受け取りながら自嘲気味に言う。ビールを八杯飲んでも日本の歴代総理大臣を空で言える山都とは違って、オレはカクテルを一杯飲んだだけで顔が赤くなり、すぐにあっちの世界へと行ってしまうのだ。
「――これ、ありがとな」
 話をそらされた。山都はTシャツの襟に手を置きながら、今日何度目になるか分からない礼の言葉を口にする。なんとか勇気を出したオレは、さっき山都にネックレスをプレゼントしたのだ。ヤンキーの店員が勧めるままに買った、最新のトレンドだというドクロモチーフのやつだった。
「山都には、何でも似合うからな」
 オレは目をそらしながら答える。男の鑑のような外見の山都には、何でも似合う。そして、性格も実に優しい。本当に完璧なやつだ。
「なあ、どうして俺にくれたんだ?」
 鈍感な山都は、時々こういう、オレをどきっとさせる問いかけをしてくる。
「お前に似合うからに決まってるだろっ」
 オレにはそれぐらいしか、言えない。
「すっごくうれしいよ。七海の贈り物は、俺にとっては世界一の宝石だ」
 どきんっ。
 なんてロマンチックな言葉で、オレを血迷わせてくれるのだろう。
「な、なあ……山都が一番弱い酒を教えてくれよ。飲んだらぶっ倒れてしまうような――そのまま爆睡して、平手打ちをくらわしても起きないようなやつ」
「ははは、面白いことを言うなー」
 そう言ってにっこりと笑いかけてくるのが、どんなにオレにとってつらいかを、こいつは全く知らない。
「――どぶろく」
「ん?」
「だから、どぶろくってお酒」
「それ、すっごく強いのか?」
「うん。一口飲んだだけでぶっ倒れる」
「おおっ」
 思わずうれしそうな声を出してしまい、慌てて口を押さえた。
「じゃ、今度持ってくるぞ」
「俺をころす気かなー?」
 そう言う山都の顔は実に楽しそうだった。
「んなわけないだろー。お前の酔っ払ったところを、この目で見てみたいんだ」
 オレは本音の半分だけを口にして、そのまますぐに帰宅した。

「――さあ、今から飲めよー」
 ようやく山都のアパートで酒盛り開始だ。時刻は晩の十時半。ゲームで目が疲れて、睡魔も近付いてきた頃を見計らって、オレはテレビの前のソファに座る山都に「どぶろく」を勧めた。
「七海も飲めよ」
「オレは下戸だって言ってるだろ」
「『どぶろく』じゃなくて、ノンアルコールのやつを用意してやる」
 言うなり山都は、台所からグラスを二つ持って来た。片方には白くどろどろと濁った液体が入っている。
 山都は優雅な仕草で、恐い顔の店主からオレが買って来た「どぶろく」の瓶を開けた。もう一方のグラスになみなみと注ぎ終えるのを見届けたところで、オレは二つのグラスの中身がそっくりであることに気付く。
「おい、まさかお前、『どぶろく』を持ってたのかよ?」
 わざわざ酒屋まで足を運んだのに。
「いや、七海のは甘酒」
 そう言って、先に入っていた方のグラスを渡される。
「へ?」
「温かいやつもおいしいけど、今日はお酒っぽく、冷たくしてるよ。俺の『どぶろく』とよく似てるだろ? 七海にも、俺との酒盛りの気分を味わってほしいから」
「そ、そうか」
 どきんっ。
 山都の艶やかな笑みには、ひどい破壊力がある。
「じゃあ、乾杯!」
「かんぱい!」

 ――ね、眠い……。
 ちょっと調子に乗って飲みすぎた。冷蔵庫で冷やされていた甘酒は、普段神社とかで飲むものとは違って新鮮で、そのほわっとした味わいにオレは魅せられてしまったのだ。
 甘「酒」なのだから、やはり少しはアルコールが入っていると思う。そしてこの甘味が、オレをどんどん眠りの世界へと引き込もうとするのだ。
 でも。
 ――おおっ!
 山都、爆睡中。ソファに横になって、すやすやと上品な寝息を立てている。
 オレが「どぶろく」を勧めまくった甲斐があった。
 どきどき、ずきゅんっ。
 心臓が一気に鼓動を速める。ついに、待ちに待った時がやって来たのだ。
 きちんと目をつぶって、きれいな寝息を聞かせてくれる山都は今、実に無防備な状態だ。
 形のいい唇が、オレを誘っている。
 そう、思いたい。
 ――山都……。
 ずっとずっと、お前のことが好きだった。
 大学で独りぼっちだったオレに、優しく声をかけてくれた山都。ただ一緒にゲームをしたり映画を見たりするだけで、とても楽しそうな笑顔を見せてくれた山都。
 温かい手でオレの頭をなでられる度に、オレがどんなにどきどきしていたか、お前は知らないだろう。
 そして。
 何度、お前の酒の強さを呪ったことか。コンパで一緒になる度に、オレが執拗に酒を勧めていた理由を、お前は知らないだろう。
 それはオレの、叶わない妄想だった。酔いつぶれたお前を、オレが友人として介抱して、そのままお持ち帰りする妄想。
 お前の肝臓に強靱な分解酵素をあげた神さまを、オレは何度呪ったことだろう。
 ……長年の夢が、ついに叶う。
 山都、今だけ許してくれ。もう二度と、お前の肝臓に負担をかけたりはしない。
 一生に一度だけの、思い出なんだ。
「好き、だ……」
 オレは爆睡中の山都の唇に、そっとキスをする。
 柔らかくて、潤いのある唇。たくさんのどぶろくを喉に流し込んだ口。
 ――温かい……。
 もうちょっと、もうちょっとだけ。
 オレは山都を爆睡させた「どぶろく」に深く感謝しながら、口づけを続ける。
 吸い付くように。山都の全てを吸い尽くすように。
 キスしてしまえばこの苦しい想いが収まると思っていたのに、一度山都の唇に触れると、それはオレの全身を熱くした。
「好きだ……!」
 たまらずオレは、山都の両肩に手を置くと、拙い舌で山都の唇をこじ開けた。白い歯列と桃色の歯茎を舌でなぞる。
 ――っ……!
 奇跡的に、噛み合わさっていた山都の歯と歯が隙間を作り出してくれた。その隙を逃さずにオレは自分の舌を潜り込ませる。どぶろくの睡眠薬効果を懸命に信じながら。
 山都の、全てがほしい。
 オレのキスのおかげで、山都が淫らな夢を見てくれたらうれしい。
 全部ほしいけど、やはり唇だけで構わない。
 身体の他の場所に触れてしまったら、もう抑えが効かないから。
 オレはただ無我夢中で、山都の口内を蹂躙した。山都の全てを、自分の唇で手に入れようとした。

 と、そこで山都の寝息が急に不規則になる。妙に荒々しい。
 沈みきった意識の奥で、オレの犯罪行為に気付いてしまったのかも知れない。
 オレはそこで、泣く泣く山都の形のいい唇に別れを告げた。
 山都の唇を解放すると、唾液が糸を引く。その場にあったティッシュでそっと拭き取って、オレはゆっくりと立ち上がった。
 ――もう二度と、やらないから。
 ありがとう、山都。人生で最高の時間を過ごさせてもらったよ。
 一向に落ち着かない自分の鼓動を持てあましながら、オレは部屋を出て行こうとした。全てを終えた脱力感と眠気のせいか、足元がおぼつかない。
「待て、七海」
 そのはっきりとした声に、オレの全身はとび上がる。
「や、山都っ……」
 いつ起きたんだ……? 今、今さっきだよな……?
「行くんじゃない」
 山都は素早くソファから立ち上がって言った。
「途中で終わらせるやつがあるか」
「へっ……えっ……!」
 ま、まさか……!
「ちゃんと、責任を取ってくれ。やっと想いが通じ合ったっていうのに、一番イイとこで中断させるなんて、お前ってなんて残酷なやつなんだ」
「はっ……?」
「俺のことを好きと言ってくれたな? その言葉を待ってたんだ! たぬき寝入りをした甲斐があったな! さあ、俺の気持ちはとっくに分かってるだろ! 続きだ、続き!」
 言うなり猛スピードでこちらにたどり着いた山都は、いきなりその場にオレを押し倒した。
「わわわっ……!」
「さあ、俺の衣服を脱がしてくれ!」
「な、何だとっ……?」
 オレに馬乗りになった状態で、何を言い出すんだ……!
「ああもどかしい! 分かった、脱ぐのは俺がやってやる!」
 そう言い終わらないうちに、山都は自分のTシャツを素早く脱ぎ捨て、ズボンのベルトをかちゃかちゃと外し始めた。
「ま、待ってくれよっ……!」
 一体何が起きている……! わけが分からないぞ!
「責任を取ってくれ!」
 山都は自分のズボンを下着ごと膝まで下ろすと、今度はオレのズボンに手をかけた。
「限界なんだ! お前のキスのおかげで、こっちは爆発寸前なんだ!」
 馬乗りになった山都が、硬いものをオレの下腹部に押し当ててくる。
「お、おいっ……!」
「お前の気持ちは分かってる! 今日は俺と七海が結ばれる日だ!」
 荒々しい息遣いで熱っぽく叫ぶと、山都はいきなりオレの首筋に噛みつくような口づけを仕掛けてきた。
「あぁっ……!」
 さっきまでの夢のような時間は何だったんだ?
 いや、こっちも夢みたいだけど……。
 いつの間にか野生化してしまった山都を前に、オレはパニックになっていた。
「ま、待てって……!」
「こんな残酷なプレイを仕掛けておいて、盗人猛猛しいやつだな! 抵抗したってムダだ! お前は『どぶろくの甘酒割り』でろくに力が出せないはずだ」
「な、何だと……!」
 まるでトランポリンの上にいるかのように、山都がオレの身体の上で跳ねている。
 抵抗しようにも、全然身体が動かない。
 ――オレ、喜ぶべきなのか……?
 少々疑問に思いつつ、オレは山都の艶やかな笑みにノックアウトされ始めていた。

(了)




こんにちは、作者の牛若です。
沙色みおさんが幹事を務めるお題SS、今回のテーマは「酒」「宝石」「盗む」でした。
今回は久々の大学生ものです。
僕の書く学生は、高校生も大学生もあまり違わないかも知れませんが(笑)。
それでも頑張ってアダルトな作品を目指しましたよ♪
楽しんで頂けたら幸いです。
ではでは、またどこかでお会いしましょう。
これからもよろしくです!

牛野若丸

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