タイムマシーン(2014年9月お題SS)★お色気注意★

BL♂UNION

大学生幼なじみもの。
甘楽さん幹事のお題SS(2014年9月)。
お題は「猫」「蜜」「月」「動く」「赤」「近未来の日本」。
約4000字。




 二十二世紀になってだいぶ経つ。
 おれが高校の古典の授業で習った漫画だと、二十二世紀のタヌキ型ロボットがタイムマシーンで二十一世紀の眼鏡美少年に会いに行き、お腹に貼り付けたパンツの中からエッチな超ハイテク道具をいっぱいプレゼントするってお話があったけど、まだそんなロボットが発明されたというニュースはとんと聞かない。
 そのロボットと少年はよくピンクのドア越しに、好きな女の子の風呂をのぞいたりスカートをめくったりしつつ、タイムマシーンで暗黒の過去をリセットする作業に精を出していた。
 そんなどうでもいいことに、タイムマシーンを使わなくていいのに。
 おれだって、過去を変えたい。

「やあ、久志」
 改札口の向こうから、チビのおれに穏やかな低音を響かせてくるのは、幼なじみの勝矢だ。おれたちは今日も同じ電車で大学に向かう。
 大学生になって、長身の勝矢はさらにかっこよくなった。高校時代は制服を規定通りに着ているだけで学校中の女の子たちが群がっていたけど、ほんのわずかなおしゃれも加わった今は、いつ芸能プロダクションからスカウトが来てもおかしくない。
「あれ勝矢、駅員室の前に猫がいるぞ」
「あ、ほんとだな」
「すぐ近くだぞ。アレルギーは大丈夫なのか?」
 勝矢は軽度の猫アレルギーで、いきなり過呼吸とかを起こすというわけじゃないが、それでもくしゃみがたっぷり出るのが常だ。
「今は、薬をのんでいるからな」
 そう言って勝矢はにっこりと笑う。アレルギー性鼻炎のひどい勝矢は、最近は処方薬をのむようになり、そのおかげで他のアレルギーもいくらか抑えられているらしい。
 勝矢は、いつも変わらない笑顔をおれに向けてくれる。
 だけど、それでもちょっとだけ、どこかぎこちない。

 あの時、おれは気付いていなかった。勝矢の気持ちに。自分の気持ちに。
 満月がきれいな夜だった。学園祭の打ち上げでクラスのみんなと私服でカラオケに行き、帰りはおれたち二人。勝矢はおれの家の門前でおれを見送り、勝矢は隣の自宅に帰るはずだった。
「久志、話があるんだ」
 勝矢は門前から動かなかった。じっと見下ろされていることに気付く。
「何だ?」
 きりっと引き締まった表情が気になって聞き返す。勝矢はそこでごくりと唾をのみ込んだようだった。
「久志。俺は、お前のことが好きだ」
「ん?」
「付き合ってくれ」
 全く予想外の言葉に呼応するように、塀の上にいた野良猫がにゃあ~と鳴いた。
「はあっくしょん!」
 猫アレルギーの勝矢がたまらずくしゃみをする。直前とのあまりのギャップに、おれは思わず爆笑してしまった。おれの笑いを制しようとする勝矢が、それでもくしゃみが止められない様子に、おれはますます笑い転げてしまう。
 笑いすぎてお腹の中がかゆくなってきたのをさすりながら、おれは言ったのだ。
「もう勝矢、いきなり何を言い出すかと思ったら、マジウケたって。男同士で付き合えるわけがないだろ。からかうのもほどほどにしろよな」
 その時は、おかしくてたまらなかった。くしゃみの止まった勝矢の微笑も、突っ込まれたボケ芸人と同じものだと信じて疑わなかった。
 だけど、それからの勝矢はほんの少しだけ変わった。
 いつも笑顔で接してくれるし、ちゃんとノリもいいけど、どこか遠慮している。そう感じるんだ。
 今頃になって思うんだ。あの時の勝矢の言葉は、実は真剣だったんじゃないのか、って。

「今日、講義が終わったら発明スタジアムに寄らないか?」
 電車で隣の席。勝矢が何気なく誘ってくれるだけで、おれの胸の中はどきどきしてしまう。だって、おれは勝矢に恋をしてしまったから。
 高校の頃は、女子の告白を断りまくっている勝矢を見ても、何とも思わなかった。だけど、大学生になって、合コンに一緒に出る度に、おれは勝矢が誰かと付き合い出すんじゃないかって、そればかり気になるようになってしまった。
 あの時、おれが真剣に応えてやっていたら、もしかして? 考えるのは、そんなことばかりだ。
「発明スタジアム、か」
 秋葉原にある、アレだ。実を言うと二十二世紀の科学は、水面下では結構進歩しているのかも知れない。実用化されていないだけで。
 確かにあの発明スタジアムは、タヌキ型ロボットを思わせるような新しい文明の利器がたくさん見学できる。ものによっては体験もできる。研究室もいくつかあって、大学で予算がもらえないような研究をしている学者は、見学者向けのパフォーマンスもしつつ、自分の研究に従事している。
 だいぶ前に、家族と行ったきりだった。
「うん」
 おれの短い返事に、勝矢はうれしそうに笑った。

「見せたいものがあるんだ」
 発明スタジアムを一通りまわった後、勝矢は大きなドアの前で立ち止まった。表札に「カツオ研究室」と書かれている。
「こんな所でカツオの研究なんかしてるのかよ」
「いや、『勝つ』に『夫』で勝夫。俺の兄貴がここで研究してるんだ」
「へえ、すごいな。何の研究?」
「今から見せるよ」
 ノックもなしに入らされる。中はまるで病室のように真っ白な空間だった。正面に白衣を着た二十代の男が立っている。
「やあ、久志くん」
「こんにちは」
「早速だが、私の大発明、『タイムマシーン』の体験者第一号になってくれないかな」
「た、タイムマシーンっ?」
 え、それって、あのタイムマシーンだよな?
 もしかして。
「過去に行ったりできるんですか?」
「ああ。でも、それで未来を変えたりはできないけどね」
「ですか」
 その言葉はちょっと残念だった。それでも、おれはもう一度あの瞬間に戻ってみたい、そう思った。
「行く日時を選んだりできるんですか?」
「ああ」
 そう言って勝夫さんは、勝矢と目を合わせてなぜか笑っている。
「それなら」
 早速「あの日」を言おうと思って、おれは隣でおれを見つめている勝矢に気付く。
「あの、おれが何を体験しているかは、勝夫さんや勝矢には見えるんですか?」
「いや、見えないよ」
「向こうには向こうのおれがいるんですか?」
「いや、君が転送されている間はいないよ」
 勝夫さんの微笑みにおれは喜んだ。
「では、行かせて下さい」
 おれはそのまま、勝夫さんの持って来たボックスの中に身を委ねた。

 きれいな満月が出ていた。おれたちは門前にいる。
「久志、話があるんだ」
 いきなりあの日が再現されていた。じっと見下ろされていることに気付く。
「何だ?」
 勝矢はそこでごくりと唾をのみ込んだようだった。
「久志。俺は、お前のことが好きだ。付き合ってくれ」
 塀の上にいた野良猫がにゃあ~と鳴いたけど、そんなのは無視する。今のおれの気持ちは決まっていた。
「ああ勝矢。おれもお前のことが好きだ」
 おそるおそる長身を見上げる。
「やったー!」
 勝矢のうれしそうな叫び声と共に、おれは強引に腕を引っ張られた。
 そのまま勝矢の部屋まで直行させられる。
「久志のその言葉を、どんなに聞きたかったかっ」
 いきなりベッドに押し倒されて、おれはパニックになってしまった。
「ま、待てっ」
「好きだ!」
「んっ」
 いきなりのファーストキス。歯列をなぞった舌が口内に侵入してきた。息ができないと叫ぶ間もなく、あっけなくズボンを脱がされ、Tシャツをたくし上げられる。
「んっ、待てって」
 胸の飾りものの小さな突起を吸われて、間抜けな声が出てしまった。勝矢の身体が密着してきて、おれの中芯に全身の熱が集まってくる。
「ま、っ、て、くれっ」
 それはおれの悲痛な叫びだった。トランクスの前開きに勝矢の膝が押し付けられ、ますます熱を持った中芯が疼いてしまう。
「待ってくれっ、早すぎるっ」
 なんとかそう言い切ったところで、勝矢の膝が容赦なく動き出した。
「あっ、ヤ、ヤバいってっ」
 トランクスがさっと脱がされたかと思うと、勝矢はそれを温かい右の掌に包み込んだ。それだけで一気に弾けそうだった。
「久志のことが、好きなんだっ」
 勝矢はその言葉を繰り返した。どくどくと熱を持ちながら蜜を先走らせている中芯の先から根元、双球と、白い指が巧みに這っていく。
「ん、あ、っ」
「赤くなってる久志って、可愛い」
 耳元で温かい吐息と共に囁かれて、全身の毛穴が一気に開く。頭に黄色い光が差し込むような感覚が来た。
「あ、あっ、あぁっ」
 とうとう耐えきれずに、夢うつつの状態で精を放ってしまったおれを、勝矢が温かい腕で抱きしめてくる。
「痛くしないから」
 言うなり、誰にも触れさせたことのない秘所に、クリームのようなものを塗った勝矢の指が侵入してきた。間の抜けた悲鳴と共に、その指を思わず締めつけてしまうおれに、勝矢は優しく笑いかけてくる。
 おれはまるで温かいもやの中にいるような心地で、勝矢の指の数が少しずつ増えてくるのをぼんやりと感じていた。
「久志っ」
 耳元で囁かれると共に、勝矢の自身がおれの中に入ってきた。
「あ、あぁ、っ」
 色っぽく眉を寄せた勝矢が、おれの中で動く。内臓をかき回されるような、何とも言えない奇妙な快感だった。
 今、おれたちは結ばれていた。
 だけど。
「か、つ、やっ」
 伝えたい。本当におれは勝矢のことが好きだって。だけど、この高校時代の勝矢に伝えたって、意味がない。
 もう、手遅れなんだ。
 そう思ったら、快感の渦中でも意思に反して目に涙がにじんでくる。
「久志っ?」
 ひどく狼狽した様子で動きを止めた勝矢に、おれは言葉を紡ぎ出そうとする。
「本当は、今、だけじゃなくてっ、これ、からもっ」
 涙でぐちゃぐちゃで、それ以上言葉にならなかった。
「ああ」
 勝矢はなぜかうれしそうに微笑む。
「その涙、うれしいよ。だけど、これはタイムマシーンアトラクションだから」
「え?」
「今お前が見ているのは、過去なんかじゃない。兄貴の発明は、体験者の希望に応じて過去と同じシチュエーションを再現してくれる装置なんだ。俺も一緒に潜り込ませてもらった甲斐があったよ」
 おれを泣き止ませるように、落ち着いた穏やかな口調で囁いてくれているその言葉の意味が、今のおれにはよく分からなかった。

(了)




こんにちは、作者の牛野若丸です。
甘楽さんが幹事を務める9月お題SSです。

今回のお題は、
(A)「猫」「蜜」「月」「動く」「赤」の中から3つ選ぶ
(B)「近未来の日本」を舞台にする
のどちらかを選んでね、ということだったのですが。
すみません、6つ全部入れてしまいました!
アイムソーリー大臣っ!

今作は牛野若丸久々の完全シリアス路線です(たぶん)。
初めてのちゃんとしたH付きお題SSなのですが、いかがだったでしょうか?(それでも字数は4000字以内で頑張りました~)
感想を頂けるとうれしいです!
ちなみにラストが唐突に思われた方は、猫に注目すると納得できるかも?

ではでは、またどこかでお会いしましょう。
これからもよろしくです!

牛野若丸

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