あすに向けて(2014年11月お題SS)★お色気注意★

BL♂UNION

キモカワヘンタイシンデレラもの。
甘楽さん幹事のお題SS(2014年11月)。
お題は「童話、戯曲、小説、名言を引用あるいはモチーフに」。
約4000字。




「またやったのねっ!」
 豪邸の中でお母さまが、お皿を割っちゃった信司兄ちゃんを叱りつける。何も言わない信司兄ちゃんは見すぼらしい服を着せられているけど、長身で整った顔立ちはいつも素敵だよ。
 僕とお姉さまはお母さまの連れ子だけど、信司兄ちゃんは亡くなったお義父さまがお母さまと再婚する前の子なんだ。お母さまはあらゆる家事を全部信司兄ちゃんに押し付けて、召使いみたいにこき使うんだよ。
「さあ活貴ちゃん、たっぷりおしおきしてあげるのよ!」
「うん、お母さま」
 僕はにっこりと笑って答えた。いつものように信司兄ちゃんを僕の部屋へと連れて行く。
「活貴、今日もすまない」
「ううん、大丈夫だよ。だって、僕も楽しいもんね」
「ありがと」
 信司兄ちゃんはうれしそうに微笑んで、いつものように服を全部脱ぎ捨てると、ひざまずいて僕に背中を向けてくる。
「さあ、やってくれ」
 早速僕は信司兄ちゃんのきれいなお尻に、渾身の平手打ちを食らわしてみたよ。パチンと爽快な音がした。
「これでいい?」
 信司兄ちゃんは「ああ」、と色っぽく頬を染める。
「活貴は?」
「とっても楽しいよ」
 僕はわくわくしながら答えた。
「じゃ、続けるね」
 二人きりの部屋に、僕が信司兄ちゃんのお尻を叩く音が響き渡り続ける。
 僕は信司兄ちゃんのお尻を叩くのが気持ちいいし、信司兄ちゃんは僕にお尻を叩かれるのが好きみたい。だから、信司兄ちゃんはわざとお皿を割るんだよね。
「すっごく楽しいよ」
 お尻への平手打ちを続けながら言ってみる。
「ああ、俺も最高の気分だ。俺たち、理想の関係だよな」
 紅潮した顔でにっこりと微笑まれると、僕もうれしくなっちゃうよ。
「活貴の気質はSだし、俺は――」
「うん、僕と信司兄ちゃんは磁石のS極とN極みたいだよね。すっごくひきつけられるし」
「お前のその天然なところが好きだ」
「僕はこのお尻ぺんぺんが大好きだよ」
 僕は最高の快感に酔いしれながら平手打ちを続ける。
「うーん活貴、『お尻ぺんぺん』って言い方はちょっとムードが壊れるな」
「え?」
「異国の言葉で尻のことを『あす(ASS)』って言うらしいぞ。これからはそう呼ぼうか」
「うわ、素敵だね。この幸せな気分にぴったり。信司兄ちゃんの『あす』ぺんぺん!」
「ふふふ」
 僕は力いっぱい、信司兄ちゃんの「あす」を叩き続けたよ。

 お城の王子さまが、今日の舞踏会で結婚相手を決めるらしい。
 お母さまとお姉さまは朝から浮き足立っていたよ。
「活貴ちゃん、あなたも準備しなさいよ!」
 お母さまが強引に僕までお城に連れて行こうとするのを拒むのに必死だった。噂によると王子さまってバイセクシュアルで、結婚相手は女でも男でもいいらしい。だからお母さまは僕にもチャンスがあると思っているらしいんだ。
 でも王子さまなんて興味ないし。そんな、たった一回の舞踏会で結婚相手を決めるなんて非常識だよ。それに、僕は毎日信司兄ちゃんのお尻を叩いているだけで十分幸せだからね。
 あんまりお母さまがうるさいものだから、僕はお腹が痛いふりをしてトイレにこもることにしたよ。観念したお母さまは、お姉さまと一緒にお城へと旅立っていった。
 やったー! これで今夜は僕と信司兄ちゃんの二人きりだよ!
 トイレから出た僕は信司兄ちゃんを探してみる。なぜか見当たらなくて、念のため玄関に出てみたら、門の前で信司兄ちゃんが知らない女の人と話していたんだ。
「――要らないって言ってるだろうが」
「も~、分からない人ね! 一生に一度のチャンスなのよ!」
「信司兄ちゃん、この人誰なの?」
 早口でうるさくまくし立てる女の人を完全に無視して、信司兄ちゃんは面倒くさそうな顔で答えた。
「魔法使いらしい」
「え、すごいっ」
 魔法使いって、本当にいたんだね!
「――よーくあたしの言うことを聞くのよ。カボチャの馬車とか高級ドレスとかの魔法は、十二時になったら解けちゃうの。だからそれまでに必ずお城を……」
「だから俺は舞踏会なんか行かないって言ってるだろうが」
「王子さまに見初めてもらうチャンスなのよ! 普段は美容整形魔法も一緒にかけてあげるんだけど、あなたの麗しい美貌なら、素のままで選ばれること間違いなしだわ! あなたにぴったりのゴージャスなドレスも魔法で一発よ!」
「あんた、この俺に女装させる気かよ」
「ねえ、信司兄ちゃんは舞踏会に行きたいの?」
 気になった僕はちょっと聞いてみた。
「いやいや。せっかく活貴と二人きりになれるまたとない機会なのに、そんなつまらんものに出ている暇はない」
「あら、あなたもすっごく可愛いわね!」
 魔法使いさんは僕の方を振り向くと、興奮した声で叫んだ。
「王子さまは攻めの可能性も高いだろうし、あなたの方が結婚相手に適任じゃないかしら! 今からあたしが魔法のドレスを……」
「僕も女装はしないし、何も要らないよ」
 僕はきっぱりと答えておいたんだ。だって、舞踏会なんかで結婚相手を決める王子さまになんか、何の興味もないからね。
 真剣な僕に驚いたらしい魔法使いさんは、うるさい早口おしゃべりをようやく止めてくれた。
「二人とも、舞踏会に行きたくないわけ?」
「うん。だって僕は、信司兄ちゃんの『あす』ぺんぺんをしている方が楽しいもんね」
「なあに、あすぺんぺんって?」
「秘密だ」
 後ろから信司兄ちゃんが、僕の両肩に温かい手を置いて答える。
「さっさと消えてくれ」
「まあ、失礼ね! いいわ、よそで頑張るし!」
 そう言って、魔法使いさんはボン! という妙な音と共に消えてしまったよ。
「信司兄ちゃんありがとう。やっぱり信司兄ちゃんと一緒にいる方が、ずっと楽しいもんね」
「うん。俺もだ」
 信司兄ちゃんは、照れたように顔を赤らめながら同調してくれる。
 そうだよ、僕と信司兄ちゃんは「磁石みたいに」親密な関係だからね。
「じゃ、早速始めるよ! あすぺんぺん!」

 翌日は朝から街全体が騒がしくなっていた。
 お母さまの話によると、昨夜の舞踏会で王子さまは一番可愛い女の子と踊り始めたらしいんだけど、晩の十二時頃に突然その子が癇癪を起こして、王子さまの頬に激しい平手打ちを五発もお見舞いして失踪しちゃったらしい。
 で、今その女の子が指名手配中なんだって。王子さまと家来たちが一緒になって、街中を探し回っているんだ。その女の子が落としていったガラスの靴が手がかりらしい。
 だけど、僕たちには関係ない話だからね。
 今日もお皿を割っちゃった信司兄ちゃんは、お母さまの命令を受けた僕の手によって、「あすぺんぺん」のおしおきを受けているんだ。
「ねえ、僕の手よりムチの方が気持ちいいんじゃない?」
 手の平が熱くなるのを感じながら聞いてみる。
「いや、活貴の可愛らしい手が最高なんだ」
 頬を染めて僕の方を振り返る信司兄ちゃんは、とっても色っぽいよ。
 と、そこで僕たちの部屋に、いきなりたくさんの兵士さんが入ってきたんだ。
「わわわ」
 僕はとび上がって焦っちゃったよ。だって、僕は信司兄ちゃんのお尻を夢中で叩いているところだったし、信司兄ちゃんはいつも通り全裸だったから。
「王子さま、ここには男しかおりません」
 先頭の兵士さんの言葉に、後ろから現れた豪華な格好の人は「そうか」と上品に笑ってみせた。え、この人が王子さま? ガラスの靴を手に持っているけど。
「ついに見つけたぞ」
 王子さまはうれしそうに笑った。
「この者たちが、王子さまに狼藉を働いたのですか?」
 いや兵士さん、それは違うよ。だって、僕も信司兄ちゃんも男だからね。
 だけど、王子さまは何も答えなかった。
「この靴を」
 そう言って、王子さまは持っていたガラスの靴を近くの兵士さんに渡す。
「この二人に履かせておみせになるのですか?」
「いや、捨てるのだ。私はこちらの方がいい」
 王子さまはよく分からないことを言って、真っ直ぐ僕たちの方へと歩み寄ってくる。
「しばらく、私たち三人だけにしてくれ」
 王子さまがきっぱりと告げると、兵士さんたちはぞろぞろと部屋を出て行ったよ。
 僕たちを捕まえるわけでもなさそうだけど、どういうことかな。信司兄ちゃんも四つん這いの体勢のまま、不安そうに僕と王子さまを交互に見比べている。
「僕たち、指名手配の女の子とは関係ないよ」
 念のために言っておくことにした。
「いやあれは、指名手配ではないのだ」
 王子さまはにっこりと笑って言う。
「私の理想の相手だと思っていた。私にあそこまで気持ちよくビンタしてくれるとは。私はそこに惚れたのだ」
「へっ?」
 僕には王子さまの言う意味がよく分からなかったよ。
「だけど、君はもっと素晴らしい」
 そう言って、王子さまは僕の髪を優しくなでてくれた。隣でゴホン、と信司兄ちゃんがなぜか大きく咳払いをする。
「私にも、同じことを」
 言いながら、王子さまは突然その豪華な服を全部脱ぎ始めた。
「さあ、私の尻も叩いてくれ」
 そうか、王子さまも信司兄ちゃんみたいに、「あすぺんぺん」が好きなんだね。
 早速僕は渾身の力を込めて、最高の平手打ちを王子さまのお尻にお見舞いしてみたよ。
「あああ効くぞ……す、素晴らしい。私と結婚してくれ」
「え」
「なにっ」
 驚く僕よりも、全裸で立ち上がった信司兄ちゃんの怒ったような声の方がもっとびっくりだ。
「活貴は王子さまであってもお渡しできません!」
「ふふふ、三人でもよいではないか」
 王子さまは満面の笑みを浮かべて言った。
「そうだね、『あすぺんぺん』は人数が増えた方が楽しいと思うよ」
 僕の言葉に、王子さまはうれしそうに笑う。
「そうだな、早速『あす』、式を挙げることとしよう。『あす』に向けて、今から準備をせねば」
「俺も活貴もお断りです!」
「ん? いや三人の方が楽しいぞ!」
「いいえ、俺は活貴と二人きりが楽しいです!」
「それは困る! 私は三人で構わないと言っているのだ!」
 信司兄ちゃんと王子さまが全裸同士で激しく言い争っている。
 そんなに「あすぺんぺん」って、人数が重要なのかなあ。

(了)




こんにちは、作者の牛野若丸です。
甘楽さんが幹事を務める11月お題SS、今回は童話モチーフに挑戦してみました。
キモカワヘンタイシンデレラで、初めてのSMものです(笑)。
いろいろとおかしな作品ですが(汗)、よかったらご感想を頂けるとうれしいです。
これからもよろしくです!
ではまた~。

牛野若丸

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