美僕アタック!~美少年の僕に全寮制男子校のみんな、さっさとアタックしてきてよね!~第1話(2015年4月お題SS)

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お題SSの形で進んでいく牛若の長期連載シリーズ『美僕アタック!~美少年の僕に全寮制男子校のみんな、さっさとアタックしてきてよね!』、本日記念すべき第1話を公開させて頂きますね!




牛野若丸主催幹事発案の2015年4月お題SS。
お題は「桜」「服」「嘘」。
4000字。




著作権表示:
Copyright (C) 2015 牛野若丸. All Rights Reserved.
2015年11月4日公開。




 桜吹雪が僕を祝福してくれているね。
 校門の前で栗色の髪をそっとかき上げてみたけど、あいにく誰も気付いていないみたいだ。
 真新しいぶかぶかの学ランに桜の花びらがたくさん付いちゃっているけど、あえて振り払ったりはしない。だって、この学園の王子さまたちが鼻息を荒くしながら股間のものを硬くして、その花びらを優しく払い落としてくれるだろうからね。
 今度は自慢の大きな瞳で上目遣いに桜の木を見上げてみる。だって、三階建ての寮が向こうに見えるから、僕の美貌を窓からのぞいてスマホで盗撮してくれる人がいるかも知れないし。
 さあ、もう撮影も済んだだろうから、スーツケースを引いて歩みを続けることにするよ。
「ああ、重いよ~」
 甲高い声で色っぽくつぶやいてみるけど、まだ僕に話しかける勇気のある人はいないみたいだ。
 でも、これからがすごく楽しみだよ。
 全寮制男子校の甘之口(あまのぐち)高校の入寮式は昼の一時、つまりあと一時間後ぐらいに始まるんだ。僕の美貌を見たら、一目惚れして襲いかかってくれる人たちがいっぱいいると思うよ。だって、全寮制男子校って言ったら、僕みたいな美少年をゲットするために死闘を繰り広げる場所って相場が決まっているからね。あ、本格的な合体はお尻が痛そうだからちょっと遠慮しておくよ。
 僕は絶世の美少年なんだ。だって、母さんがそう言っていたから。今日もやっぱり見送りには来てくれなかったけどね。
『ねえ母さん、僕って本当に美少年なの?』
 昨晩、久しぶりに一緒に夕食をとることのできた母さんにちょっと聞いてみた。
『ええ、決まってるじゃない』
 母さんはタバコの吸いすぎでしゃがれた低音ボイスで答えた。
『この絶世の美女であるあたしの息子なんだから、絶世の美少年に決まってるわ』
 そう断言されると安心できたよ。だって、新興化粧品会社の美人女社長として名高い母さんの言葉なら説得力抜群だからね。
 最近の母さんとの会話で思い出せるのって、それぐらいかな。昔から極端に、会話の回数もスキンシップの回数も少ないし。
 母さんは僕が幼い頃に離婚した後、女手一つで僕を育ててくれたけど、仕事がどんどん軌道に乗りすぎて一緒にいられる時間は減るばかりだった。この頃は家で母さんと会えることはほとんどなくて、僕はコンビニ弁当ばかり食べている。洗濯や皿洗いみたいな家事スキルもやたらと上手になっちゃったよ。小学校の頃から数えても参観日は二回しか来てくれたことがないし、運動会や文化祭に来てくれたこともないし、小学校の入学式以外は節目の式典も全部欠席だったんだ。やっぱりそういうのって、寂しいよね。
 幸い僕は勉強のできるいい子だったし、母さんの苦労も分かっているから、恨んだりはしていないよ。それに、母さんの仕事はとてもうまくいっているから、うちはとてもお金持ちだもんね。
 でも、寂しいという気持ちは消えなくて――そんなある日、僕は母さんの部屋の押し入れで、この高校を受験するきっかけとなる素敵な本に出会ってしまったんだ。
 それは、ボーイズラブ、通称BLっていうジャンルの漫画だった。ジャンル名はスマホでググッてみて分かったんだ。なぜか上にバスタオルが被せてあったけど、全部で五十冊ぐらいあったよ。
 そのほとんどは全寮制男子校が舞台だった。大金持ちばかりの高校に入学した美少年の主人公が、会う人みんなに一目惚れされちゃって、学園中のみんなに追いかけ回されるってお話なんだ。たぶん、五十冊のほとんどがそんなストーリーだったと思うよ。作者はみんな違う人だったけどね。
 みんなに愛されている主人公に感情移入するのが心地よくて、僕は全部を一気に読破しちゃった。寂しさがなんだか紛れるんだよ。エッチシーンがあるのにはびっくりしたし、合体の仕方にはちょっと面食らっちゃったけど、何度も似たようなシチュエーションを読んでいるうちに慣れてきた。母さんがこれらの漫画をバスタオルで隠していたのは、たぶんエッチシーンがあるからだろうね。
 BLの虜になった僕は、スマホでたくさんの電子書籍を買い漁った。母さんは僕に自分のクレジットカードの番号を教えてくれていて、月十万円以内なら何を買ってもいいって言ってくれていたからね。ついでにBLの知識をネットで仕入れたりもしたよ。
 いろんなBL漫画を読み漁ったけど、やっぱり僕は全寮制男子校ものが一番好きだった。だって、あんなにみんなに溺愛されるなんて、自分が主人公だったらすごく幸せに感じると思うからね。
 だから、僕は勉強を一生懸命頑張って、家から遠く離れた甘之口高校に入ったんだよ。あいにく、場所はよくある王道設定みたいな山奥じゃなくて、校門から徒歩十分ぐらいのところには繁華街がある普通の町中っていうのがちょっと残念だけどね。でも、寮では無断外出が禁止らしいから、男だけの空間に閉じ込められて期待通りの展開になると思うんだ。
 母さんによると僕は美少年らしい。身体はちっちゃいし、目は大きいし、唇はふっくらしてるから絶世の美少年なんだって。僕もあの主人公たちみたいになれるんだと思うとわくわくしたよ。中学校の時はろくに友達ができなかったけど、男だらけの全寮制男子校に入れば、たくさんの攻めに愛してもらえると思うからね。
 さあ、寮の入り口が見えてきたよ。僕に最初に襲いかかってくるのは誰かな?
「――おはよう。新入生だね」
 うわ、いきなりハイスペックな攻めが登場だね。下駄箱の前で長身を僕の背に合わせてちょっと屈めて、眼鏡の縁を人差し指でくっと上げながら微笑む様子は、切れ長の目も手伝っていかにも知的な美形攻めって感じがするよ。しわ一つない制服の着こなしは完璧だし。よく見ると、脇に大学ノートを抱えているね。うん、これは僕の鋭い推理によると――
「お、おはようございますっ。はい、新入生です、生徒会長っ」
「え? なんで僕が生徒会長って知っているのかな?」
「あ、なんとなくですっ」
 生徒会長さんが目を白黒させている。だって、こんなルックスは生徒会長以外にありえないもんね。
「ふふふ、面白い子だね」
 そう言って頭をなでてくる。わあ、早速僕って愛されてる! 会長、僕をこのままその場に押し倒して全裸にひん剥いてくれるのかな!
「僕の名前は花宮上総(はなみやかずさ)だ。君の名は?」
 あ、頭をなでる手が離れちゃった。まあ確かに、自己紹介する前に押し倒しちゃうのはちょっと早すぎるもんね。
「はい、僕は静川奏人(しずかわかなと)って言いますっ」
「ふふふ、緊張しないで、奏人くん」
 緊張しないで、奏人くん。ささやくような透き通ったバリトンボイスが、僕の耳から電流のように全身に伝わっていく。絶対この花宮会長、僕に一目惚れしていると思うよ。早く押し倒してほしいな!
「すみませんっ、なんだかどきどきしちゃってっ」
 花宮会長を見ると、どきどきしちゃって。そういう意味を込めて上目遣いに言ってみる。もちろん、僕はどきどきなんてしていないけど。だって、僕は会長に愛してもらう側だからね。
「ふふふ」
 会長が怪しい微笑を浮かべる。早速僕を下駄箱の前に押し倒してくれるのかな。そう思ったんだけど。
「――おお奏人!」
「っ……!?」
 いきなり後ろから僕のファーストネームを大声で呼ばれてとび上がっちゃった。思わず振り返ったけど、その短髪の長身男には全く見覚えがない。人の良さそうなグミみたいに丸っこい目が印象的だけどね。
「久しぶり!」
 そう言って両肩にどんと手を置かれる。すごくいらっとした。だって、せっかく花宮会長との下駄箱セックスフラグが立っていたんだからね。
「誰……?」
「覚えてないのか~?」
 その男は大げさに肩をすくめて残念がっているんだけど。ちなみに花宮会長はにっこりと僕たちの様子を眺めていた。
「全然……」
「俺だよ、一条勝樹(いちじょうかつき)。小学校時代、ずっと同じクラスだったろ」
「嘘……」
 そんな微妙な知り合いが今さら、美少年の華やかな高校デビューに現れるなんて。僕の邪魔をしないでほしいな。
「ふふふ、幼なじみかい」
 花宮会長が微笑ましそうな声を出しているけど、ちょっとそれは違うと思うよ。確かに勝樹ってクラスメートがいたのは覚えているけど、当時は僕みたいにちっちゃかった気がするし――おっと、そんなことはとりあえず置いておかなくちゃ。まず、僕は勝樹と友達だった覚えが全くないんだ。「幼なじみ」って言ったら、たいてい家が隣にあって、毎日一緒に学校に通って、毎日のように遊んで、中学か高校辺りから攻めが受けにハアハアし始めて押し倒してハッピーエンド、っていうのが王道だけど、僕は勝樹とそんなフラグを立てた覚えが全くないんだよ。……そう言えば、何かのイベントでお弁当を一緒に食べたような気もするけど、せいぜいそれぐらいだし。
「中学で転校しちゃったけど、奏人のことを忘れたことはないぞ」
「嘘……」
「だから、嘘じゃないって。せっかく夢のような再会をしたのに、悲しいことを言わないでくれ」
 そう言って頭をなでてこようとするのを僕はさっと避けた。うーん、勝樹のセリフって、微妙に幼なじみ再会ものの王道を行く気がするんだけど、ちょっと僕の萌えからズレてるんだよね。ほとんど思い出せない大昔のクラスメートとの再会で、王道らしくその場でどきどきしたり鼻息を荒くしたり股間を熱くしたりっていうのは、ちょっと無理があるし。
 それにこういうのって、一度にフラグを立てちゃうとまずいと思うんだ。まずは、目の前の完璧な花宮会長を攻略することから始めないとね。
 僕は勝樹をとりあえず無視することにした。とろけるような美少年の笑顔で、上目遣いに話しかける。
「花宮会長、僕はまずどこに行ったらいいんでしょうか?」
「あ、そうだったね」
 花宮会長は眼鏡の縁を押さえながらにっこりと笑った。
「入寮式まで時間があるから先に部屋に行ってもらおうかな。えっと、奏人くんと一条くんの部屋は――」

(続)




こんにちは、作者の牛野若丸です。
実は全寮制男子校に挑戦するのは初めてだったりしますw
これからいろんなキャラが出て来て、にぎやかなストーリーになっていく予定なのでお楽しみに!
連続ドラマのような感覚でゆっくりと楽しんで頂けると幸いです。
それでは今日はこの辺で~♪

牛野若丸

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2 thoughts on “美僕アタック!~美少年の僕に全寮制男子校のみんな、さっさとアタックしてきてよね!~第1話(2015年4月お題SS)

  1. こんにちは。コメント&感想欄ではご無沙汰しています。
    感想を書かせていただきますね!

    ゲームシナリオっぽいですね~!
    主人公がナル入ってて、妄想家で、いかれている(笑)そりゃあ、まともな神経の友達なら、避けてしまいますね。奏人が男子校で高校デビューして良いお友達(おほもだち?)が出来ると良いです。

    そして、第一話ということで、まだまだ続くようなので、これから色んな攻めが出てくるのは楽しみです(笑)

    果たして、奏人は誰を攻略するのでしょうか?

    1. カンラさん、こちらこそお久しぶりです~。
      一見マイペースだけどぶっ飛んでいる奏人、楽しんで頂けたようでうれしいです♪
      攻めはどんどん増えていく予定ですので(笑)、これからをお楽しみに~!

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