美僕アタック!~美少年の僕に全寮制男子校のみんな、さっさとアタックしてきてよね!~第2話(2015年4月お題SS)

BL♂UNION

お題SSの形で進んでいく牛若の長期連載シリーズ『美僕アタック!~美少年の僕に全寮制男子校のみんな、さっさとアタックしてきてよね!』の第2話です。
引き続き4月のお題を使っています。




牛野若丸主催幹事発案の2015年4月お題SS。
お題は「桜」「服」「嘘」。
4000字。




著作権表示:
Copyright (C) 2015 牛野若丸. All Rights Reserved.
2015年11月5日公開。




静川奏人(しずかわかなと):一年生、主人公。
一条勝樹(いちじょうかつき):一年生、奏人と小学校が一緒。
花宮上総(はなみやかずさ):三年生、生徒会長。




 会長はなぜか僕と勝樹の顔を交互に見て、さらに楽しそうな笑みを浮かべた。
「おお、よかったね。奏人くんと一条くん、三階の同じ部屋だよ」
「嘘……」
「イエーイ!」
 勝樹がまるで小さな子供――じゃなくてエサをもらった大型犬みたいに、激しく飛び跳ねてうれしそうな声を上げている。いやだよ、こんなやつと一緒なんて。しかも確か甘之口高校の寮って、三年間同じ部屋なんだよ。すごくがっかりだ。
 王道の全寮制男子校ものだと、一年生は生活指導を受けるために三年生と同室っていうのがよくあるよね。で、僕みたいな美少年はたいてい目の前の花宮会長みたいなハイスペックの攻めと同室になって、部屋に備え付けられたシャワーを僕が使ったりすると、僕の裸体やびっしょりと濡れた栗色の髪を見て欲情した攻めが襲いかかってきてハッピーエンド、っていうのが定番なんだ。だけど相手が勝樹じゃ、そんなロマンチックな展開はありえないよ。
 そりゃ、勝樹も昔の面影が消えるぐらいにかっこよくはなっているけどね。攻めのスペックとして満たしているのは長身ってことと、広~い意味でイケメンってことだけだよ。だって、美少年を押し倒すハイスペックの美形攻めって言ったらシャープな切れ長の目って相場が決まっているけど、勝樹の人の良さそうなグミみたいに丸っこい目――いわゆるどんぐり眼はかすりもしないからね。短髪のさわやかなスポーツマンタイプではあるけど、こういうのはラストシーンでは見向きもされない当て馬ポジションっていうのが定番なんだ。
「一条くん、すごくうれしそうだね」
 オーバーな喜びのジャンプを終えた勝樹を、花宮会長は微笑ましく見ていた。
「奏人くんも『嘘……』って、実に感慨深そうだね」
「いえ、違いますっ」
 もう、せっかく今から下駄箱で最初のおさわりセックスが始まるところだったのに! 会長もポーカーフェイスが本当にうまいんだから。
「ちなみに僕は三階の寮長でもあるからね。これからよろしく」
 そう言うなり、花宮会長は僕の頭をもう一度優しくなでてくれた。うわ、この素敵な人が僕と同じ階の寮長なんて。やっぱり彼は僕の運命の人その一、だと思うよ。僕は魅惑的な笑顔を会長に見せ付けようとしたんだけど……
「わっ」
 いきなり勝樹に強引に腕をつかまれて、会長から引き離されちゃった。ほんと、空気読めないんだから!
「寮長、俺たちの部屋は何号室ですか?」
 僕の肩に手を回しながら、会長にぶっきらぼうに告げている。
「勝樹、この人は生徒会長でもあるんだからねっ」
「ふふふ、仲が良くてうらやましいなあ。えっと、二人の部屋は三六九号室だよ。一時前には向こうの体育館まで来るようにね」
「はいっ」
「はい」
「わっ」
 会長に返事をした勝樹が次の瞬間、僕が手に持っていたビニール袋をさっと奪うなり、中から上履きを取り出して床に置いてみせたことにびっくりする。しかも、僕のスーツケースまで取っちゃったんだ。
「そ、そんなことしてくれなくていいんだからねっ」
 おっと、これじゃBLっていうよりお兄ちゃんに素直になれないツンデレ妹みたいじゃないか。
「じゃ、また後でね」
「わわわ」
 花宮会長の優しい声に可愛らしく答えたいっていうのに、勝樹は自分と僕のスーツケースを持ったまま無言でどんどん行ってしまうんだよ。一体いつの間に自分も上履きに履き替えていたんだろうね。僕は慌てて勝樹の置いた上履きに足を入れて追いかける。勝樹がそのまま奥の階段を一気に上り始めているのが見えてびっくりしちゃった。
「勝樹、そんな両手にスーツケース持って上がったら肩を痛めちゃうから! っていうかエレベーターはないの!?」
 スーツケースを取り返そうとするのを勝樹は巧みによけてしまう。
「エレベーターは怪我人専用だって下見の時に聞いた。大丈夫、俺って体力自信あるし」
 一気に階段を進んで、ほとんど手ぶらの僕の方が息苦しくなっちゃってるっていうのに、勝樹の呼吸は全然乱れていないんだ。そのまま余裕の声で話し続ける。
「奏人みたいに華奢なやつが、スーツケースを持ってこの階段を上がるのは無理だからな」
「もう、僕をバカにして!」
 おっと、僕らしくない言い方になっちゃった。僕みたいなか弱い美少年が重いものを持ってもらうのは本来当たり前のはずなのに……勝樹に言われるとムキになっちゃうよ。
「よし、三階だ」
 あっという間に階段を上り終えちゃった勝樹は息一つ上がっていない。
「――あ、ありがとっ」
 息を切らしながらお礼を言っておく。なんだかもやもやしちゃうけど。今度こそスーツケースを取り返そうと思ったのに、勝樹はそのまますうっと自然な仕草で進んでしまいながら、僕の方をにっこりと振り返るんだ。
「お前、小学校の時から全然変わってないなあ。奏人のこと、一度も忘れたことはないよ。頼むから怒ったり無視したりしないでくれよな。もし気に入らないところがあるなら直すからさ……」
 大型犬が僕の丈まで長身を屈めて、なんだかしおらしい声で言ってくるのを見ると、ちょっとあしらうのをためらっちゃうよ。うーん、これが花宮会長みたいに完全無欠のハイスペック攻めが言ってくれたら……あるいは本当に僕との思い出がたっぷりある正真正銘の幼なじみ攻めが言ってくれたら、きゅんと来るセリフなんだけどね。ちょっと面食らうだけだよ。だって勝樹との思い出とか、全然ないと思うし。
 無言の僕を寂しそうに見た後、勝樹は目的の部屋の前で立ち止まった。
「ここか、三六九号室」
「うわ、卑猥な番号だよね」
「っ……?」
 思わずつぶやいちゃった僕を、勝樹が戸惑った表情で振り返る。
 だって、よく考えてみてよ。三は3P、六九はシックスナインって考えたら卑猥でしょ。三人でシックスナインなんて、相当ハードなBLレーベルでもめったに出て来なかった気がするからね。さすがの僕も、合体とシックスナインは遠慮したいな。
 って言おうかと思ったんだけど、この攻めとしては魅力不足の、人の良さそうなさわやかイケメンには理解できなさそうだから黙っておいたんだ。
 足を踏み入れた部屋の中は僕の想像通りだった。年季の入った勉強机ときれいなシングルベッドが二つあって、窓からは桜の木が見えるんだ。さっき僕が校門前で髪をかき上げた時に盗撮してくれた生徒もたくさんいそうな気がしてわくわくするよ。トイレもシャワーも付いていて、小さな冷蔵庫もある。
 期待に胸をふくらませて大きな目を輝かせている僕を、勝樹は長身を屈めてじっと見つめてきた。
「奏人」
 そんな意味深な声でささやいてもダメだよ。だって、勝樹はただのモブキャラだからね。
「これからよろしくな」
「うん」
 とりあえずにっこりと笑ってみせた。途端に勝樹の顔が赤くなる。
 えっ、最初に僕の魅惑の笑顔で赤面してくれたのが勝樹なんて、ちょっといやだな。でもいいよ、本命の攻めにも当て馬にもモブキャラにも愛されてこそ、全寮制男子校の美少年は幸せを謳歌できるんだからね。勝樹は真剣に特別な気持ちを僕に抱いているわけじゃなくて、僕の美貌にノックアウトされただけだろうけど。モブキャラとして僕の学園生活計画のリトマス試験紙として、これから活躍してもらえるかもね。僕の笑顔がちゃんと悩殺レベルか、っていうのを確かめる時とかさ。
 それよりもやっかいなことがあるんだ。僕がこの勝樹と三年間同じ部屋ってことは、僕が本命の攻めとお色気シーンに突入する際にこの部屋は使えないってことだよね。だって、この微妙に積極的な勝樹が僕の言う通りに部屋を出て行ってくれるとは思えないから。ってことは、僕はいざという時は、攻めの部屋を自分から訪問しなくちゃいけないってことになるなあ。
「あっ」
 勝樹、いきなり僕の制服を触らないでよ。そう言おうとして、彼が僕の学ランに付いた桜の花びらたちを手にとったことに気付いた。
「ははは、こんなにいっぱい付けちゃって」
 何だよ、僕を子供扱いして。あ、またツンデレ妹みたいなセリフになっちゃうところだった。美少年が子供扱いされて頬を膨らませるっていうのは王道の一つではあるけど。この花びらはすっごく大切なアイテムだったのに。あの花宮会長が、どきどきしながらこの花びらを優しく払い落としてくれるところだったのに。勝樹がしてくれたんじゃ意味ないよ。
 そう言えば、下駄箱から花びらのことを忘れて走ったり歩いたりしてきちゃったから、階段や廊下のあちこちに僕の花びらが落ちているんじゃないかな。でも、美少年が落とした花びらなんて、すでに結成されているはずの僕専用親衛隊のみんなにとってはダイアモンド並みの価値があるはずだよね。それなら気にする必要ないかな。
「ありがと」
 今度はぶっきらぼうにお礼を言っておいた。一人ぐらいは直接使役するナイトがいた方がいいだろうから、いちいち抵抗せずにこれからは勝樹を遠慮なく活用させてもらうことにするよ。
「なあ、奏人は会長と知り合いなのか?」
「えっ? 違うけど……」
「俺よりすっごく仲良さそうだったし」
 人の良さそうな顔の眉間に、似合わないしわが寄った。再会するなり独占欲発揮なんて、幼なじみ攻めにしか許されないことだっていうのにね。勝樹、僕のことを誰か別の人と勘違いしているんじゃないかな、って思っちゃうぐらい奇妙だよ。全然勝樹との思い出なんてないんだってば。
 僕はそれからしつこい勝樹からの絡みを適宜かわしつつ、体育館の入寮式に向かった。諸説明をする花宮会長の上品な仕草はとってもまぶしかったよ。やっぱり彼が僕の第一攻略目標だね。
 その日、僕はいちいち馴れ馴れしい勝樹のことは適当にあしらってすぐに寝床についた。いよいよ明日は入学式だからね。この夢のために一生懸命勉強した僕には、最高のご褒美が待っているんだ。
 そう、僕は新入生総代なんだよ。みんなの前で可愛らしくあいさつを読み上げて、美少年の僕に何人がノックアウトされちゃうか楽しみだなあ!

(続)




こんにちは、作者の牛野若丸です。
4月のお題を使った2つ目のSSとなりましたが、あと1話で4月分が完結する予定となっております(ぺこり)。
基本的には毎月1つだけのSSを書くつもりなのですが、4月はいろいろなイベントが一度にあるものでして…(笑)
それでは今日はこの辺で失礼しますね~!

牛野若丸

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